モンテカルロシミュレーションとは?
投資の「未来予測」をサイコロでイメージする
「コンパス+」のコラムやシミュレーターでは「モンテカルロシミュレーションで計算」という表示がたびたび登場します。
「カジノの名前…?なんだか難しそう」「なぜ、ただの複利計算じゃないの?」と感じてしまうかもしれません。
モンテカルロシミュレーションとは、未来は不確実であるという事実を前提に、 コンピュータがサイコロのように何万回も結果を引き直して最も“ありえそう”な未来を探しにいく計算方法です。
ここでは、その仕組みをサイコロを例にしながら、できるだけ簡単に整理します。
1. 「投資」と「サイコロ」の共通点
以前学んだとおり、投資のリスクとは「危険」ではなく振れ幅(不確実性)のことでした。 例えば次のような条件を想像してください。
- 期待利回り:5%
- リスク(標準偏差):15%
平均すると年5%ほど増えるけれど、良い年(+20%)も悪い年(-10%)も起こりうる―― これは偏ったサイコロとよく似ています。 サイコロの平均は3.5でも、次の1回で「6」か「1」かは誰にも分かりません。 投資とサイコロの共通点はただひとつ、「未来は誰にも分からない」ということです。
2. 「1回だけ」と「1万回」の違い
もし「このサイコロを1回だけ振って、出る目を当ててください」と言われたら、それはほとんどギャンブルです。
ところが「1万回振ったときの平均値は?」と聞かれたら、 平均は3.5付近に落ち着くと、かなり確信を持って答えられます。 モンテカルロシミュレーションは、まさにこの「平均が収束する力」を活用しています。
3. シミュレーションの具体的な手順
例として「100万円を、利回り5%・リスク15%で20年間運用する」ケースを見てみましょう。
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20年後の未来を1回シミュレーション
- 1年目:投資サイコロを振る → +10%(110万円)
- 2年目:再び振る → -5%(104.5万円)
- …
- 20年目:未来Aの最終資産は210万円 など
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この「20年間」を1万回くり返す
コンピュータが猛烈なスピードでサイコロを振り続け、未来Bは350万円、未来Cは180万円…と結果が蓄積されます。
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1万通りの未来を並べる
算出した結果を悪かった順から良かった順にずらりと整列し、どの位置の未来がどの金額なのかを読み取れるようにします。
4. 「診断レポート」の作り方
「コンパス+」でお見せしている結果は、この1万通りの未来から次の指標を抜き出したものです。
- 中央値(Median): ちょうど真ん中(5,000番目)に並んだ未来。例では260万円で、最も“ありえそう”な未来として提示します。
- 振れ幅(25%〜75%): 下位25%は180万円、上位25%は350万円といった具合に、幅そのものを帯グラフやテキストで表示します。
この帯こそがリスク(不確実性)の正体であり、どこまで覚悟しておくべきかを一目で把握できます。
結論:なぜモンテカルロ法を使うのか?
もし「100万円を5%の複利で20年」と単純計算すると、答えは約265万円です。 ですがこの計算にはリスク(振れ幅)が一切考慮されていません。
リスクを取り入れると中央値は260万円のように少し低くなる一方で、 最悪なら180万円、順調なら350万円という可能性のマップが得られます。 モンテカルロ法は未来を言い当てるものではなく、公平かつ誠実に「判断材料」を示すための方法なのです。
シミュレーションは将来の成果を保証するものではありませんが、 不確実な未来に備えるための現実的な視点を与えてくれます。